この大規模なプログラムのなかでは、主に女性を中心に、労働に従事するブルーカラーのワークウエアが製造された。それは「SEWING ROOM」と呼ばれる縫製室で作られ、その衣料には「Made by W.P.A SEWING ROOMS, NOT TO BE SOLD」(雇用促進局縫製室製品、売り物に非ず)と記載されたタグが付けられた。縫製室のあったテキサスの州では、裁縫師たちは自分の仕事に大きな誇りを持ち、「W.P.A」のイニシャルは「We Patch Anything」(なんでも縫う)の略であると宣言。彼女たちは古着を修理し、新しい衣服を作り、困窮している人々や「WPA」の労働者、つまり彼女たち自身が着用した。 そんな「WPA」の衣料は、デザインと縫製仕様が実に興味深い。デザインのベースはミリタリーワークウエアで、多くのアレンジが施されていること。縫製仕様は当時ワークウエアで主流だった「還縫い」はなく、「本縫い」のみで作られていること。このためユニークなデニムのワークウエアが存在し、アメリカではCCCを凌ぐ勢いでコレクターが増加中。激動の時代のアメリカーナの不屈の精神が宿った衣料品なのだ。